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症例名

膝蓋骨
内方脱臼症候群

しつがいこつ
ないほうだっきゅうしょうこうぐん

2012年2月2日 木曜日

症状 / 特徴

小型犬種(チワワ・ヨークシャーテリア・トイプードル・ポメラニアンなど)に多く見られます。また、大型犬やダックスフントなどでは外方脱臼が多く見られます。
膝蓋骨内方脱臼症候群は先天的な構造上の問題により、「膝のお皿」と呼ばれる膝蓋骨が内側へ逸脱する病態です。また、進行性の病気ですので、経年変化により症状が発現してくることが多く、症状としては逸脱の違和感による患肢の一時的な挙上~関節炎の併発による跛行など、様々あります。
症状が悪化してくると、下腿骨の変形を伴う場合もあります。

膝蓋骨内方脱臼症候群

※手術前の写真

診断

診察室内では膝関節の触診による膝蓋骨の脱臼状況により仮診断が可能です。また、レントゲン検査を実施することで、膝蓋骨が内側へ逸脱している状況や下腿骨の変形の確認などを行います。
ただし、膝蓋骨内方脱臼症候群は進行性の病態の為、一度の診察ではなく計時的な診察が有効な診断につながりますので、定期的なチェックをする方が良いでしょう。

処置

膝蓋骨内方脱臼症候群は形態的な異常の為、治療は外科処置のみとなります。
ただし、脱臼の程度が軽度なもの、進行が遅く将来的に関節炎を起こす可能性が少ないものなどに関しては、軟骨のサプリメント(コンドロイチン・グルコサミンなど)で経過を見る場合もあります。
外科手術の方法としては、大腿四頭筋(膝蓋骨に繋がっている太腿の筋肉)の切開・膝蓋骨の滑車溝の掘り直し・膝蓋骨の整形・関節胞の外側への縫縮を行います。
また、下腿骨の変形を伴う症例に関しては、上記処置に加えて膝蓋腱の付着部である脛骨粗面を大腿四頭筋・膝蓋骨・脛骨粗面が正常なラインに並ぶように転移植を行います。

経過および予後

膝関節を開いて外科処置を行うため、安静と十分な感染予防の為に一週間の入院治療が必要となります。
その後は、定期的な膝関節の稼動域や関節の稼動時の状況確認などの診察を行い、術後2カ月でレントゲンを撮り、膝関節に膝蓋骨がしっかりとはまっていることを確認し、完治とします。ただし、術前に関節炎などを起していた場合は、リハビリ期間が長くなり、完治まで時間がかかってしまったり、関節炎を起こす前の100%の状況に回復しない場合もありますが、関節炎の原因となる膝蓋骨の逸脱は起きることはない為、悪化は防ぐことができるでしょう。
また、脛骨粗面の転移植を行った症例に関しては、ピンを使用していますので、術後半年ほど経過した段階でピンを抜くこともできます。ピンは異常を示す状態でなければそのままでも問題ありません。

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